『ママ起業家 これだけ知っておけば十分 税金+社会保険&経営の便利ブック』より一部抜粋

【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。

愛顧される前に、お客さまを愛顧しよう

「じゃあ、お客さまに無駄なサービスをしてはいけないのか?」と反論したくなるかもしれませんね。実は、無駄なサービスという考え方ではなく、お客さまの心に届くサービスを提供するという心がけを提案したいと思います。

商品やサービスには、「機能的」な価値と、「情緒的」な価値があります。機能的な価値とは、「約束したことが当たり前に行われる商品・サービス」のことです。一方、情緒的な価値とは、「お客さまは直接的には何も言わないし、期待していないけれど、『こうしてくれたらうれしい』と思っていることを察知して提供する商品・サービス」のことです。

少し費用がかかる場合もありますが、特にサービスについては、費用がかからない場合がほとんどです。

「大きな荷物を持ってあげる」「雨の日に傘を差し出してあげる」など、お客さまとのコミュニケーションを多く取ることでできることが多いようです。ちょっとした「おもてなし」の心と言えるかもしれませんね。そして、情緒的な価値のほうが、お客さまの心に残り、ファンになってくれやすいという傾向があります。

ビジネスは、「1+1=2」という単純な方程式ではいきません。時間差が発生するのです。「荷物を持ってあげた」からといって、それに代金を払ってくれるわけではありません。そこには、信頼関係の芽が生まれたに過ぎません。

でも、それが少しずつ積もっていくことで、お客さまはあなたのビジネスのファンになっていくのです。リピーターになってくれるかもしれません。口コミをしてくれるかもしれません。でも、目的は、「口コミをしてもらう」「リピーターになってもらう」ことではなく、目の前のお客さまへの「心遣い」に集中することですね。

収穫も大事だけれど、種蒔きも大事

ビジネスには時差が発生するという話をさせていただきました。よく「起業したら3年はがんばれ!」などと言われたりしますよね。これも、やはり時差の問題で、主な原因は「お客さまの心理状態」にあるといえます。

よくマーケティングでは、図表36のように、「AIDMA」とか、最近では「AISAS」などといわれたりします。これはいったい何のことでしょうか?

お客さまは、あなたの製品やサービスを知ってから、購入するまで、少しずつ心の距離を縮めていきます。「存在に気づいた」「興味を持ってみた」「もっと知りたいと思った」「記憶に残した」「(買うという)行動を起こした」という感じの流れです(AIDMA)。

最近では、インターネットでショッピングするということが増えてきたので、少し形が変わったといわれています。「存在に気づいた」「興味を持ってみた」までは一緒ですが、その後「検索してみた」「買ってみた」、そして、「情報を共有してみた」というところまで行きます(AISAS)。

いずれの場合も、お客さまは知ってから買うまでには、いろんな心理的なプロセスを経ていて、それには時間がかかるのですね。焦ってはいけません。

実は、これに加えて、お客さまがまだお客さまになっていない状態から、一見さんになり、リピーターになり、上得意になり、そして、信者のようになってくれるまで、ゆっくりとあなたの事業との距離を縮めていくという考え方があります。図表37の「ピラミッド顧客図」をご覧ください。

このピラミッドの階段を上る、つまり、お客さまがファンへと育っていくには、やっぱり時間がかかるのです。

キッチン・ガーデニングでいえば、ハーブや野菜の種を蒔いてから、収穫できるまで時間がかかりますよね。それと同じようなもので、お客さまが自社との関係性を築いていくのにも、時間がかかります。「収穫(売上を上げる)」は最終段階です。お客さまの全体像や、どの階段を上がっているのかなどを意識して、種蒔き、水やり、草刈り、追肥など、その時々できることを考えてコツコツと実行していくことが大事ですね。

もちろん、採算もそのあたりの状態を含めた上で、考えてみてくださいね。

ワークライフバランス、家族、仕事、自分、何が大事?

ママ起業で最も気になるのが、ワークライフバランスではありませんか?私も、次男が1歳半で、まだ母乳を与えているころから、今の仕事をしています。そして、ワークライフバランスについては、いつも悩んできたように思います。幸いにも、夫がとても協力的だったことに助けられ、これまで無事にやってこれたのだと思っています。

しかし、一番大変なのは、自分の負い目との戦いではないかと思います。例えば、仕事や会議で遅くなってしまい、夜9時や10時を過ぎた頃に、夫に電話をするとします。

すると、「How long?(あと何分で帰ってくる?)」と必ず尋ねられるのです。これを聞いて、「辛いなぁ」といつも思っていました。「遅くなって申し訳ない」と。

しかし、当の本人は、そういう意味ではなく、自分の段取りのために尋ねていたのです。「自分がシャワーを浴びている間に帰ってきたら、玄関のカギは開けてあげられない」とか、「ちょっと買い物に出かけようと思っていたので、入れ違いになるかも…」とか。そんな夫の思いやりはさておいて、罪の意識から勝手な解釈をしていたのは、私のほうなのですね。

子どもたちもそうです。「きょうは何時に帰ってくる?」と長男(中2)は玄関で毎朝必ず、学校へ出かける前に尋ねます。もちろん、早く帰ってきてほしいという思いはあるのですが、ママが早く帰っても全く何も気にしていないこともあります。どうも心の準備をしているだけのようです。しかし、常に罪の意識があるのはママのほうなのです。

実際、「仕事がんばれ!」とエールを送ってくれることもありますし、「ママの仕事手伝うよ」といってくれることもあります。そして、「大きくなったら、ママの仕事手伝う」といってくれることさえあります。

結局は、「あまり気にしないのが一番」だと思うようにしています。気にするほうが、精神衛生上よくないと割り切っています。

ただし、いくつか自分の中でルールを決めています。

例えば、「お弁当が必要なときは絶対につくってあげる」とか、「参観日や運動会などの行事には絶対に行くと決めている」とか、「毎朝、必ず玄関で見送ってあげる」とか…。そうしてルールを決めることで、限られた時間の中でも、精一杯やっていると自分をほめてあげられるからです。

それと、もう1つ心がけていることがあります。夫の口からよく出る言葉なのですが、「Qualitytime」という考え方です。英語圏の国では、大切にされている考え方で、直訳すると「最も楽しくて価値のある時間、充実した時間、質の高い時間、有効に使える時間」となります。

ピンと来ないかもしれませんが、家族が一緒のときは、一緒にテレビを見るときでも、その番組についてそれぞれの考え方をシェアするとか、お互いの絆が深まることを最優先にした時間の使い方をすることを心がけることです。だから、わが家では各自が別々の部屋でゲームをしているというようなことはありません。同じ部屋に集まって、家族で一緒に過ごします。

時間の量を増やすことはできませんが、質を高めることはできます。そういうポジティブな発想を持つことが、ママ起業家の働き方のコツかもしれませんね。

最後に、「家族を大切にできない人は、お客さまを大切にできるはずがない」ということを忘れないでほしいです。私も、いつも自分にとって、家族にとってQualitytimeになっているかどうかを、自分に問いかけるようにしていますが、自分を大切にできない人は、家族も、お客さまも大切にできないかもしれませんね?

自分に厳しく、相手に優しくできるのは、自分が満たされている状態にあるからです。だから、満たされた自分でいられるように、自分のコンディションを整えることを心がける必要があります。

例えば、「自分はダメ」ではなくて、「自分の決断を信じてあげる」とか、がんばっている「自分を認めてあげる」とか、「ほめてあげる」とか、「自分の成長を感じる」とか、「今、健康で、家族がいて、自分の得意なことで起業という夢に向かっているということに感謝する」とかでしょうか。

先ほどご紹介した「自分の棚卸」(109ページ)も、定期的に取り組んだり、見直したりすると、自分の価値を認めてあげられるし、自分があるのは周りの人のおかげだということにも気づきます。自分を大切にするいいツールにもなりそうです。

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『ママ起業家 これだけ知っておけば十分 税金+社会保険&経営の便利ブック』
【連載#1】あなたの思いをビジネスにする
【連載#2】あなたらしさで、周りの人を喜ばせよう
【連載#3】「計画する」ことにトラウマを持っている人へ
【連載#4】愛顧される前に、お客さまを愛顧しよう

著者:岡京子
1965年6月23日、和歌山市生まれ。日本大学法学部政治経済学科卒。在学中は、日本大学新聞において、史上初の女性編集部長として創刊1000号の発行を手がける。卒業後、女性向けの週刊新聞を発行する(株)新代新聞社(東京都港区)編集部に勤務し、「子どもの話題」、「女性関係のニュース」、「国際関係」の分野に関する記事やコラムの企画・執筆に携わる。その後、書籍等の配達サービスを海外在住邦人向けに提供するOCS,London,Ltd.に採用され渡英。その後、NNA(ロンドン)等での経済・金融関連の情報の執筆業務を経て、和歌山に帰省。株式会社岡会計センターの事業を承継、代表取締役となる。唯一の国家資格の経営コンサルタントである中小企業診断士を取得し、2014年3月登録(経済産業省)。
※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。